症例15:横行結腸癌

症例15:横行結腸癌

<解説>

大腸癌とは、大腸表面の粘膜から発生する悪性腫瘍の総称。
治療には内視鏡治療、外科的治療、化学療法、放射線治療などがあり、どの治療が推奨されるかは患者さん毎に異なる。
大腸癌の深さ(深達度)に加え、転移、浸潤、腹膜播種の有無などから、総合的に判断し、治療方針を決定する。

大腸癌の罹患率は50歳代から年齢が上がるにつれ高くなり、男性の方が女性より罹患率、死亡率ともに2倍ほど高いのが特徴。
日本人では、
直腸癌、S状結腸癌が多いとされており、次いで上行結腸癌、直腸S状部癌、横行結腸癌、盲腸癌、下行結腸癌の順。

<症状>

早期の大腸癌は無症状が多く、進行すると症状が出現することがある。

  • 血便
  • 便秘や下痢
  • 便が細くなる
  • 残便感
  • 貧血など

腫瘍が増大し、腸管の内腔が狭くなると、腹痛・腹部膨満感・嘔気や吐などの症状が出現。
また、腫瘍が他の臓器へ転移、浸潤した場合、他臓器の画像検査や他臓器症状(血尿、性器出血など)が発見の契機となることも。

右側大腸では内溶液が液状であり、症状が出るとしても貧血や軽度の腹痛に留まることが多い。
左側大腸では便が固形となり腸管腔も狭くなるため、通過障害を来す頻度が高くなるため、腹痛や嘔吐、肛門に近い腫瘍では血便や便柱狭小化を来すこともある。

<検査>

  • 便潜血反応検査
  • 注腸検査
  • 大腸内視鏡検査
  • 病理検査
  • 癌の広がりや転移を調べる検査
    →大腸癌と周囲の臓器の位置関係や、癌の広がり、リンパ節転移の有無を調べるため、CT検査MRI検査といった画像検査を行う。必要に応じて腹部超音波検査、PET検査など。

<治療と予後>

大腸癌による閉塞では、腸閉塞に準じた治療、経肛門的イレウス管、待期手術。S状結腸軸捻転では内視鏡的整復が一般的。
大腸がんのステージ別の生存率

  • ステージ0:97.3%
  • ステージⅠ:94.4%
  • ステージⅡ:89.0%
  • ステージⅢ:77.5%
  • ステージⅣ:18.8%

<合併症>

  • 縫合不全
  • 腸閉塞
  • 創感染(「手術治療の合併症」参照)
  • 腹腔内膿瘍
  • 出血・リンパ漏
  • 排尿障害、排便障害など
  • 生命にかかわる重篤な一般的(全身的)合併症として、肺炎と肺塞栓症