2021.10.29

症例13:甲状腺癌

部位
モダリティ
<臨床情報>
70代 男性
甲状腺癌の頸椎転移あり。

<解説>

甲状腺の一部に腫瘍ができるもの(結節性甲状腺腫)のうち、悪性の腫瘍が甲状腺癌。
甲状腺にできる主な悪性腫瘍には、乳頭癌、濾胞癌、低分化癌、髄様癌、未分化癌、悪性リンパ腫などがある。乳頭癌、濾胞癌、低分化癌の3つはまとめて甲状腺分化癌と呼ぶ。

  • 乳頭癌
    甲状腺癌の中で最も多く、全体の90%ほどが乳頭癌。リンパ節への転移が多くみられるが、進行は遅く治療後の経過はよい。一部の乳頭癌は再発を繰り返したり、悪性度の高い未分化癌に変わることもある。

 

  • 濾胞癌
    濾胞癌は、甲状腺癌の中で2番目に多い。良性の甲状腺腫瘍(濾胞腺腫)との区別が難しいことがある。
    乳頭癌に比べてリンパ節への転移は非常に少ないが、肺や骨などへ遠隔転移を起こしやすい。遠隔転移を生じない場合の予後は比較的よいとされている。
    濾胞癌は乳頭癌はとともに、高分化癌という。

 

  • 低分化癌
    低分化癌は、甲状腺癌の中で1%未満と稀であり、高分化癌と未分化癌の中間的な特徴を示す癌。高分化癌に比べると、遠くの臓器へ転移しやすい性質がある。

 

  • 髄様癌
    髄様癌は、甲状腺の中のカルシトニンを分泌する細胞、傍濾胞細胞が癌化したもので、甲状腺癌の中の約1〜2%を占めている。乳頭癌や濾胞癌よりも症状の進行が速く、リンパ節、肺、肝臓への転移を起こしやすい性質。遺伝性(家族性)の場合もあるため、家族も含めて検査が行われることがある。

 

  • 未分化癌
    未分化癌は、甲状腺癌の中の約1〜2%を占め、進行が速く、甲状腺周囲の臓器への浸潤や遠くの臓器への転移を起こしやすい、悪性度が高い癌。

 

  • 悪性リンパ腫
    甲状腺にできる悪性リンパ腫は、甲状腺癌の中の約1〜5%がこの種類になる。慢性甲状腺炎(橋本病)を背景としている場合が多いとされ、甲状腺全体が急速に腫れたり、嗄声や呼吸困難が起こったりすることがある。
    悪性リンパ腫の種類としては、MALTリンパ腫や、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫などがみられる。

<画像の解説>

  • 超音波検査
    甲状腺癌の診断において最も有用な検査。しこり(腫瘍)の有無や部位、サイズ、良性腫瘍と甲状腺癌の区別、さらには甲状腺癌のタイプまで推測することが可能。
  • CT
    甲状腺癌と良性腫瘍を区別するために有用ではないが、甲状腺癌の周囲への広がりを見たり、肺や骨などに遠隔転移していないかを評価するために使用する。

<診断>

  • 視診、触診後に超音波検査、超音波検査で癌を疑うしこりが見つかった場合は細胞診検査を行う。
  • 甲状腺癌の4つのタイプうち、乳頭癌、髄様癌、未分化癌の3つは、細胞診を行うと高い確率で診断が可能。
  • 濾胞癌に関しては、良性腫瘍である濾胞腺腫の細胞と顕微鏡でみてもほぼ同じ様に見える為、細胞診では診断が出来ない。
  • 濾胞癌と濾胞腺腫を区別するためには、診断と治療を兼ねて手術によって甲状腺を摘出し、細胞診よりさらに細かい組織検査を行う必要がある。

<治療と予後、合併症>

甲状腺癌の治療は手術が基本となり、その他放射線治療や薬(甲状腺ホルモン薬、抗癌剤)など、癌の広がりや種類によって治療方針が変化する。
一般的に、甲状腺癌は悪性度の低いものが多く、癌の進行は緩やかだが、悪性度が高いものもある。肺や骨、肝臓などの遠隔臓器への転移は稀。

手術では、切除範囲が大きいほど合併症のリスクが高くなる。合併症は甲状腺機能の低下(甲状腺ホルモンの分泌不足)、副甲状腺機能の低下(血液中のカルシウムの不足)、声のかすれなどの反回神経の麻痺が挙げられる。