症例31:TFCC損傷

症例31:TFCC損傷

<解説>

TFCC損傷は英語で「Triangular Fibrocartilage Complex 」、日本語では「三角線維軟骨複合体損傷」といい、手関節の小指側にあるぐりぐりのところあたりにある軟部組織のこと。
症状として、手関節、特に尺骨側の痛みが多く、手首をひねる運動やドアノブを回すような動作が困難。

TFCCを構成する組織は、以下の7つ。

1.関節円板
2.三角靭帯
3.尺骨三角骨靭帯
4.尺骨月状骨靭帯
5.掌側橈骨尺骨靭帯
6.背側橈骨尺骨靭帯
7.尺側手根側副靭帯

TFCC損傷の主要因は外傷で、手関節部への強い衝撃や過剰な負荷の繰り返しにより起きる。
スポーツや転倒、作業中の外傷による靱帯損傷、手関節の酷使によって起こりやすい。
外傷がなければ、変性によって発生することもある。
変性の要因として、加齢や遺伝的に尺骨が橈骨に対して長くなっている事が考えられる。

TFCC損傷の分類
幾つかのパターンがあるが、以下のPalmer分類が有名。

1:外傷による損傷
ⅠA:中央部の穿孔
ⅠB:尺骨付着部の剥離
ⅠC:遠位側付着部の剥離
ⅠD:橈骨付着部の剥離

2:変性による損傷
ⅡA:TFC断裂
ⅡB:TFC断裂に月状骨や尺骨の軟骨軟化巣を伴うもの。
ⅡC:TFC穿孔に月状骨や尺骨の軟骨軟化巣を伴うもの。
ⅡD:TFC穿孔に月状骨や尺骨の軟骨軟化巣、月状三角骨靭帯穿孔を伴うもの。
ⅡE:TFC穿孔に月状骨や尺骨の軟骨軟化巣、月状三角骨靭帯穿孔、尺骨手根関節症を伴うもの。

TFCCは軟骨と靭帯から構成される為、レントゲンには写らないので、TFCCの損傷を把握するためには、
軟骨の観察ができるMRIにて検査を行うのが最適。

<画像の解説>

      • 単純X線写真
        レントゲンでは、尺骨が橈骨よりも長いかどうか、尺骨茎状突起の剥離骨折などを確認する。
        また、類似した症状を示す遠位橈尺関節(DRUJ)の病変も鑑別
      • MRI
        線維性軟骨は均一な低信号だが、断裂や変性を来すと靭帯の不連続性や高信号になる。
        ※尺骨との結合部は血管に富む結合織からなっており、T2*強調像で軽度高信号で、索状の形態を呈する。
        ※外傷性の断裂は橈骨付着部、変性は中心部に多くみられる。
        補助診断として関節造影検査で靱帯断裂の有無を判断する場合も有り。

<鑑別診断>

■ 手関節部の腱鞘炎
■ 尺骨突き上げ症候群

<治療と予後、合併症>

保存的療法:専用サポーターで安静にする。痛みが強い場合、水溶性のステロイドを関節内に注射し、それでも症状が改善されない場合は手術治療を検討する。損傷の程度やパターンによって、術式を選択。
新鮮例:鏡視下・直視下縫合術など
陳旧例:再建術、尺骨突き上げ症候群の場合は尺骨短縮術など