症例25:多脾症候群

症例25:多脾症候群

<解説>

多脾症候群は、内臓各部位に構造的な異常を来すようになった疾患を指す。

人の身体は左右非対称であることが正常だが、発生段階で左右対称になってしまうことがある。左側の構造物が右側にも認めるようになった状況を「左側相同」と呼ぶ。

左側相同では、本来左側にのみに位置する脾臓が身体の右側にも認めるようになるものであり、通常よりも多くの脾臓を認めると言う意味から「多脾症候群」と呼ばれる。

無脾症では右側にあるものが両側に出現し、無脾症は右側相同と呼ばれ、両者をあわせて内臓錯位と呼ぶこともある。

多脾症候群では、心臓や腸管などの構造についても異常を伴うようになる。特に心臓については、単心室や心内膜症欠損、両大血管右室起始症などといった重篤な先天性心疾患を合併することもある。

消化管の異常に関連して、腸回転異常や総腸間膜症などの合併症を有することがある。新生児期乳児期には症状がなく経過し、嘔吐や腹痛などの腸閉塞症状をきっかけとして病気が指摘されることがある。

 

構造異常が引き起こされる明らかな原因は同定されておらず、極稀に遺伝的な要素を指摘できる場合もあるが、何故病気が発生したのか判らないことがほとんどである。

<治療と予後、合併症>

多脾症候群の治療は、心臓奇形に対してのアプローチが重要であり、合併奇形によって治療方針が異なる。手術療法、心不全や肺高血圧に対応するために薬剤療法、カテーテル治療が行われることもある。

 また、多脾症候群では不整脈を合併することもあり、胎児期の間から徐脈性の不整脈を来し、ペースメーカーの使用が求められる場合もある。

 

参照:medical note,国立循環器病研究センター