症例18:リンチ症候群

症例18:リンチ症候群

<解説>

正常な細胞には、DNAを複製したときに生じた突然変異を見つけて修復する働きがあるが、そうした働きをする遺伝子の一部が生まれつき変化しているため、その機能が低下している病気をリンチ症候群という。突然変異を修復する働きが低下しているために、細胞分裂の度に遺伝子の突然変異が蓄積し、癌が発症しやすくなると考えられている。
リンチ症候群の場合、20~30代などの比較的若い年齢で癌が発生しやすく、手術で癌を取り除いても残った大腸や他の臓器(子宮、卵巣、胃など)に別の癌が出来やすい傾向がある。また、同じ遺伝子の変化を持つ血縁者にも、癌が発生する可能性が高くなる。

大腸内視鏡の写真でもリンチ症候群の大腸癌なのか、普通の大腸癌なのか見分けは殆どつかず、リンチ症候群を確定するには、遺伝子検査が必要。
遺伝子検査で異常が見つかった場合は、大腸癌、胃癌、子宮体癌、卵巣癌などの検査を定期的に行うことが早期発見に役立つとされている。

<診断>

リンチ症候群のスクリーニング検査として、癌と正常の組織材料を用いてマイクロサテライト不安定性(MSI)を行う。検査の結果、陽性の腫瘍をもつ患者はリンチ症候群の遺伝学的検査を考慮する。

リンチ症候群は、MLH1、MSH2、MSH6、PMS2の4つの遺伝子のうちの1つに変化がある場合に診断され、この遺伝子の変化は親から子へ50%の確率で伝わる。

<治療と予後、合併症>

リンチ症候群と診断されても、全員が癌になる訳ではなく、生涯に大腸がんを発症する確率は28~75%(女性は24~52%)、子宮内膜がんを発症する確率は27~71%と言われている。

一般的に、リンチ症候群の大腸癌の予後は良好であることを示す臨床データが複数報告されている。

参照:癌有明病院リンチ症候群セルフチェック