症例1:不整脈源性右室心筋症の疑い

症例1:不整脈源性右室心筋症の疑い

<診断>

不整脈源性右室心筋症の疑い

<所見>

CT上、右室拡大を主体とした高度な心拡大を認めます。ご指摘の不整脈源性右室心筋症が示唆される所見です。
心室中隔に沿って脂肪沈着があり、有意な所見と考えます。右室壁にも脂肪沈着がありそうですが、心外膜脂肪組織との区別が困難であり、有意とまではいえません。心内腔の肉柱形成については、超音波やMRIなどの他モダリティーとも併せてご評価ください。
動脈硬化性変化は目立ちません。

<解説>

若年者の突然死の原因ともなる不整脈源性右室心筋症(ARVC/D)という心疾患があります。 ARVC/Dは、心筋が脂肪組織に置換されることで、心拡大や心機能低下を引き起こし、心室頻拍や心室細動などの致死的不整脈や心不全が問題となる稀な心筋症です。
右室心筋の脂肪浸潤、線維化が、外膜下からはじまり、心内膜側に広がり、貫通性となります。細胞骨格を構成するタンパク質、とくにデスモソーム蛋白の遺伝子変異が本症の原因と考えられています。
右室に特異的所見である、瘤形成、肥厚した肉柱、突出bulgingなどを認め、また右室全体の収縮低下を認めます。CTでの脂肪浸潤の判断は難しく、通常はMRIで評価します。本症例では、心室中隔の脂肪構造が明瞭であり、有意な所見として拾い上げました。右室の脂肪浸潤については、心外膜脂肪との区別は困難です。