2021.12.01

症例20:ADPKD/常染色体優性多発性嚢胞腎

モダリティ
<臨床情報>
50代 男性 慢性腎不全の精査目的です。透析患者さんです。

<診断>
多発性嚢胞腎(ADPKD疑い)

<解説>

常染色体優性多発性嚢胞腎(Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease:ADPKD)とは、両側の腎臓に嚢胞が無数に生じ、年齢とともに増大していく遺伝性疾患。
嚢胞が増えて大きくなると、腎機能が低下しする。また、腎臓以外の臓器にも合併が生じる全身の病気。
腎嚢胞は生まれたときから少しずつ作られるが、30〜40歳代まではほとんど症状がない。嚢胞が増えて大きくなると、腎臓の大きさは数倍になり、正常な腎臓の組織が圧迫され、腎機能が低下していく。
60歳までに約半数の患者が、腎臓の働きの代わりの役割を担う透析療法が必要な末期腎不全になるが、腎機能低下のスピードは個人差が大きく、中には生涯、腎機能が保たれる場合もある。
腎臓の他に肝臓にも嚢胞ができることがあり、嚢胞の感染や疼痛、腹部膨満などの一因となる。
健診でのエコー、人間ドックで診断されることも多い。無症状でも家族に多発性嚢胞腎患者がいる(11%)との理由で診断される。
多発性嚢胞腎では、脳動脈瘤の合併率が高く、さらに破裂を起こしやすい。年齢が若くても破裂することがあるので、嚢胞腎と診断されたら、まず脳動脈瘤の検査を受けることが大切。

<症状>

■ 肉眼的血尿
■ 側腹部・背部痛
■ 易疲労感
■ 腹部腫瘤
■ 発熱
■ 浮腫
■ 頭痛
■ 嘔気
■ 腹部膨満

<合併症>

■ 高血圧
■ 心臓弁膜症
■ 脳動脈瘤

<画像の解説>

■ 超音波検査
すべての患者に対して有用。ただし感度が低いので、30歳以下のPKD2患者ではCTやMRIのほうが望ましい。

■ CT/MRI
腎は腫大し、無数の嚢胞がみられる。肝の嚢胞性病変の有無と予後の評価に有用。
CTは結石や実質の石灰化も検出できるが、MRIではこれらは検出できない。CT、もしくは、MRI血管造影は腎動脈の描出が必要な時に行われる。
ヨード造影剤使用が禁忌の症例に対しては、MRIで検査が可能。

<鑑別診断>

■ 常染色体劣性多発性嚢胞腎(Autosomal Recessive Polycystic Kidney Disease:ARPKD
■ 結節性硬化症
■ フォンヒッペル・リンドウ病
■ 口顔指症候群1型
■ 糸球体嚢胞腎
■ Hajdu-Cheney症候群
■ 他の先天奇形
■ 限局性腎嚢胞疾患、後天性腎嚢胞
※これらの疾患の正確な診断には腎外病変の検討が重要。

<治療と予後、合併症>

 

根本的な治療法はない。進行を遅らせる治療として、トルバプタンが2014年3月に保険適用となる。嚢胞増大を助長するとされるバゾプレッシンの作用を抑制するものであり、世界的な臨床試験において、腎嚢胞の増大と腎機能の低下を有意に抑制することが報告された。
また、多くの患者で高血圧を合併する。降圧治療が腎機能に対して、明らかな有効性は示されていないが、合併頻度の高い脳動脈瘤破裂など頭蓋内出血の危険因子を低下させることや心血管合併症の予防には有効と考えられている。
透析に至った患者の腹部膨満を緩和する方法として、両側腎動脈塞栓術が行われ、良好な結果が得られている。
経過、予後は、個人差が大きく、腎機能は患者によって異なる。
60歳までにADPKD/多発性嚢胞腎の患者さんの約半数が末期腎不全となり、透析療法や腎臓移植が必要となるが、日本の透析医療は進歩しており、腎不全で亡くなる患者さんはほぼいない。
ADPKD/多発性嚢胞腎のために透析を始めた患者さんの予後は、他の病気が原因で透析を始めた患者さんと比べて良好で、長生きする可能性が高い。
脳動脈瘤によるくも膜下出血の危険性が高い(患者の10%)ことが注意点。

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